ECサイトのカゴ落ちって何?
ECサイトにとってカゴ落ちは大変大きな機会損失の減少です。
本コラムでは、カゴ落ちとはどのような現象か?またカゴ落ち対策にはどのようなものがあるかをご説明します。
「カゴ落ち」は英語で「cart abandonment」です。
その為、「カート放棄」とも言われます。
日本では「カート放棄」よりも「カゴ落ち」がよく使われます。
カゴ落ちとは、ECサイトで商品をカートに入れた状態でサイトを離脱した状態を指します。
商品をカートに入れいていることから、ユーザーには少なからず購入意思があったはずです。
しかし何かしらの理由で購入を諦めてサイトを離脱しています。
その離脱の原因を突き止めて対策することでカゴ落ちを防止し、カゴ落ちで失っていた売り上げを取り戻すことができます。
カゴ落ち対策は売り上げアップには欠かせない施策です。
カゴ落ちの発生率
アメリカのWEBのUX(ユーザーエクスペリエンス)を調査・研究する機関Baymard Instituteの「41 Cart Abandonment Rate Statistics」によると、41つにも及ぶ調査結果の平均カゴ落ち率は「69.57%」というデータが出ています。
参考記事:41 Cart Abandonment Rate Statistics – Cart & Checkout – Baymard Institute
商品をカートインしたにも関わらず、購入しなかった人が7割もいます。
ECサイトにとってこれは驚くべき数字です。
カゴ落ちによる損失額は売り上げの3倍
カゴ落ちによる損失額は一体どれくらいなのか。
株式会社イー・エージェンシーが行った調査では、カゴ落ちによる機会損失は平均で売り上げの約2.5倍(最大で約3.1倍)であるとのことです。
参考記事:ECサイト、売上の約2.5倍がカゴ落ちによる機会損失 ~ イー・エージェンシー – カゴ落ち率を改善!『CART RECOVERY カートリカバリー』
月の売り上げが1,000万円のECサイトの場合、平均で2,500万円のカゴ落ちが発生していることになります。
このサイトがカゴ落ちを5%改善するだけでも、月に125万円、年に1,500万円の売り上げをアップすることができます。
いかにカゴ落ちがECサイトにとって大きな損失であるかが分かります。
カゴ落ちの理由ベスト10
ユーザがサイトを離脱する理由は何でしょうか。
「41 Cart Abandonment Rate Statistics」にカゴ落ちの理由が記載されています。
2020年、4,560人のアメリカ成人を対象としたアンケート回答です。
- 商品価格以外の配送料、手数料など高すぎた:50%
Extra costs too high (shipping, tax, fees) - 会員登録が必要だった:28%
The site wanted me to create an account - 注文完了までのプロセスが長過ぎた:21%
Too long / compllicated checkout process - 注文合計金額を事前に知ることができなかった:18%
I couldn’t see / calculate total order cost up-front - 商品の配送が遅過ぎた:18%
Delivery was too slow - クレジットカード情報を入力するのに不安を覚えた:17%
I didn’t trust the site with my credit card information - ページでエラーが発生した:13%
Website had errors / crashed - 返品ポリシーに不満を感じた:10%
Returns policy wasn’t satisfactory - 使いたい支払い方法がなかった:6%
There waren’t enough payment methods - クレジットカード決済が失敗した:4%
The credit card was declined
上記のアンケート結果を見て御社でも改善できる点に気づいたのではないでしょうか。
カゴ落ち対策を考える。対策することで売り上げをアップできる
カゴ落ちする理由ごとに、カゴ落ち対策を考えてみます。
商品価格以外の配送料、手数料など高すぎた
送料無料のECサイトは少なくありません。
大手EC、大手モールは送料無料ですので、ユーザーはECサイトに対して送料無料を期待します。
注文確認画面に進んで初めて配送料がかかることを知ると一瞬にして購入意欲が削がれます。
配送料を完全に無料にすることが困難であれば、一定額以上の注文額で送料無料にすることを検討すべきです。
また、どうしてもユーザーから送料を徴収しなければいけなければ、事前にユーザーに送料が掛かる旨を認識さえるようサイトに記載するべきです。
注文フローに進んで送料が掛かることを知るよりは、事前に認知させることでユーザーの購入意欲を低下させることを防ぎます。
参考記事:
ワークマンが楽天から撤退のニュースから楽天の送料無料サービスを考える
EC-CUBEで送料あり商品と送料なし商品を販売する
会員登録が必要だった
ECサイトは商品を発送する為、ユーザーの住所や氏名は必ず登録して貰わないといけません。
ユーザーもそれは理解していますが、入力すべき会員情報が多いと会員登録を億劫に感じてしまいます。
注文時の会員登録の項目は最低限に抑えます。
職業、趣味、どこでサイトを知ったかなど、ECサイト側のマーケティング的な都合で入力させるべきではありません。
それらの項目は注文後に改めて入力して貰うような流れにします。
また、会員登録フォームのEFO(Entry Form Optimization / 入力フォーム最適化)を行って、フォーム入力の手間を極力除くことも必要です。
また、会員登録を嫌うユーザーが一定数存在していますので、非会員での注文を可能にしておきましょう。
Amazon Payを導入すれば、Amazonの会員情報を自動で連携することができる為、ユーザーは新たに会員登録をする必要がありません。
Amazon Payの導入も検討してみるのもいいかもしれません。
参考記事:EC-CUBEにAmazon Payを導入すれば会員登録や注文が増える
注文完了までのプロセスが長過ぎた
ECシステムによっては、カート画面→ログイン画面→配送先設定画面→支払い方法画面→注文確認画面→注文完了画面という遷移をするサイトがあります。
ユーザーが経由するページが増えるごとにサイト離脱率は上がりますので、カート画面から注文完了画面までは極力ページ数を減らすようしてください。
注文合計金額を事前に知ることができなかった
ECシステムによっては、注文確認画面で初めて注文合計金額が表示されるサイトがあります。
注文フローの早い段階で合計金額を表示するようシステムを改修すべきです。
商品の配送が遅過ぎた
送料無料と同様、翌日配送が当然のように思うユーザーがいます。
これも、送料無料と同じく大手ECや大手モールが翌日配送を提供している弊害でもあります。
翌日配送を行うためには、社内の体制を整えるだけでなく、倉庫業者にも協力して貰う必要があり、なかなかハードルが高いです。
当日配送は困難でも、翌営業日には発送できる体制を整えるべきです。
クレジットカード情報を入力するのに不安を覚えた
クレジットカード情報を入力する際にユーザーが不安を覚えるのは、ECサイトに対して信頼性・亜粘性を感じて貰えなかったことが原因に挙げられます。
昨今クレジットカード情報漏洩や個人情報漏洩などの事件が後を絶ちません。
ユーザーはセキュリティに敏感になっていますので、セキュリティ対策をしっかり実施しサイト上で安全性をアピールする必要があります。
また、デザインは信頼性を与える役割を持っています。
安っぽいデザイン、デザイン崩れなども日頃のチェックで改善すべきです。
また、機能の不具合があることもサイトに対する不信感を与えます。
不具合が出ないシステム運用を心掛けてください。
ページでエラーが発生した
以前は正常に動作していた機能が、様々な理由で動作しなくなることがあります。
その為、定期的に注文が正常に完了するかを確認し、問題を見つけ次第対処するべきです。
また、リテラシーの低いユーザーの場合、誤操作でエラーが発生することがあります。
チャットボットを導入して、エラーで先に進めなくなったユーザーをサポートすることで、無事注文完了まで進ませることも可能です。
返品ポリシーに不満を感じた
故障や不良品の返品を受け付けるのは当前ですが、ユーザー起因の返品も極力に応じることが望ましいです。
ユーザー起因の返品を受け付ける場合は商品状態の条件を設けておけば結構です。
また、サイトでしっかりと商品の詳細を伝えましょう。
商品情報を詳細に記載、商品画像の枚数を増やす、動画を商品ページにアップするなど。
商品ページを工夫することで、ユーザーが思っていたものと実際の商品が異なることによる返品は減らすことは可能です。
使いたい支払い方法がなかった
クレジットカード決済、コンビニ決済、口座振り込み、代金引換などは最低限必要な支払い方法です。
これらに加え、電子マネー決済、キャリア決済、Amazon Pay、楽天ペイ、LINE Pay、Apple Pay、メルペイ、PayPay、Pay-easyなどなど様々な決済手段が存在します。
また、むやみやたらに決済手段を増やすと、手数料・管理費が増えます。
自社ECサイトのターゲット顧客がどの支払い方法を多用しているかをリサーチし導入しましょう。
クレジットカード決済が失敗した
「ページでエラーが発生した」でも記載しましたが、以前は正常に動作していたものが動作しなくなることもあります。
その為、定期的に注文が正常に完了するかを確認し、問題を見つけ次第対処すべきです。
また、クレジットカード決済が失敗する場合の多くがユーザー操作に原因があります。
ですから、誰でも入力できるようなデザイン、画面仕様を検討したり、チャットボットを導入して、エラーで先に進めなくなったユーザーをサポートしましょう。
カゴ落ち対策は上記だけではない
カゴ落ちの原因と対策を記載しましたが、カゴ落ちの対策はこれだけではありません。
カゴ落ちのままサイトを離脱したユーザにリマインドメールを送ることも効果的な対策です。
カゴ落ち対策は永遠に続く
以上のように、カゴ落ちはECサイトにとって売り上げの損失を招いていますし、カゴ落ち対策をすることで売り上げをアップすることが可能です。
また、カゴ落ちの原因は時代とともに変わっていきます。
一度対策したら終わりではなく、常に問題が潜んでいないかを検証し、対策し続けることが大切です。
投稿者プロフィール
- 関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。
システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。
その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)
2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。
クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
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